バディシステム

[たいせつなバディシステム]

 水中では、不完全にしか働かなくなる感覚機能を補うために、人間はお得意の器具や道具をいろいろ作りました。水中時計、深度計、コンパス、水中筆記具、照明器具、ダイビングコンピュターなどなど。しかし、これらはあくまでも器具、道具にすぎません。計器はひつようなときに誤りなく読み取ってはじめて役に立つのであって、うっかり見るのを忘れた、見誤ったというのではなんの役にも立ちません。なによりたいせつなのは潜水の基本動作で、その一つが「バディシステム」(連れ添い潜水)です。

 バディ(BUDDY)とは仲間の意ですが、潜水におけるバディとは、単に時間的、空間的に一緒に潜った仲間ということでなく、お互いの不完全な感覚(とくに注意力)を補い合い、判断を客観視し合い、行動を豊かにし合うツレアイ、おおげさにいえば、命を預けあった伴侶ということがいえます。陸上の世界でも、長い人生を送るには家族や親友、恋人がいなくては淋しい限りですが、その人たちがいないと生命にかかわるというほどではありません。ところが、水中の世界では、ほんのひとときの単独行動でも、身の破滅につながることもあるのです。感覚と計器が狂って狂っていた場合に、修正してくれる存在がなくなるためです。

 この意味で水中におけるツレアイとは、人生における親や妻、夫よりもはるかにたいせつな存在といえましょう。

 

[バディ潜水の方法]

 スクーバダイビングでは、二人で連れ添って行動するのが基本動作ですが、単に一緒にいればいいというものでもありません。互いに、相手に気づかずにいることや忘れていることを注意し合い、安全に充実した行動をとるためにたすけあわなければなりません。そのためにはなによりも人間関係=ヒューマンリレーションの確立が必要です。ただし、気心や行動パターンを知り合っていることはたいせつですが、なれ合いや甘えは禁物です。相手をかえりみないのも困りますが、その逆に相手を頼りすぎるのもまたこまるのです。先生と生徒のコンビなら生徒が先生を頼ってしまっても仕方がありませんが、いわゆる潜り仲間の間では、平等に相手を思いやるのが理想です。
 次に、バディ潜水の具体的な方法や心構えを列挙してみます。

 

[バディを組むあいては]

  • 先生が生徒と、ベテランがビギナーと組む場合は、前者が責任、主導権を持ってくれるから、後者は前者に従順に行動していればまず間違いない。
  • 長年の竹馬の友同士で組む場合は、互いのキャパシティーがよくわかっているから、気をゆるめさえすらば相互扶助はうまくゆく。
  • 知り合って日の浅い二人の場合には、心して協調し合い、無用な遠慮や愚かな反発は捨てるようにしないとコミュニケーション不足による危険にさらされる。ダイビングツアーで、メンバー同士の面識が少ない場合は、出発前からバディの編成を決め、少しでも気心がつかめるよう努力しておく。
  • 未熟者同士でバディを組むことは絶対に避ける。 
 

[方法としては]

  • あらかじめ行動する予定や作業の分担を決めてから潜る。
  • その場の視界に合わせて、互いにはっきり見える距離以上に離れない。どんな透明度のいいときでも、互いに手を伸ばせば届く距離が理想。
  • 一定の時間ごとに、かならず互いの存在状態を確認し合う。
  • コミュニケーションの頻度を蜜にする。
  • 相手の動作の緩急、目つき、顔色を観察し合う。 
 

[トラブルが予測されたら]

  • 思い過ごしではないかと考えないで、すぐにコミュニケーションする。
  • 相手からの指摘、提案、要求にはエゴイズムを捨てて、とりあえず応ずる。(事の是非はあとで検討してよい)。
  • トラブルにあった相手に対しては、客観的な判断のもとに行動する。
 

[バディを組む意味は]

  • トラブルがおこったとき、たとえ相手を助けられなくても、時や場所、状態を通報することができ、救助態勢を整えることができる。逆に、自分なにかあったときは、相手にその旨すぐ伝えることができる。
  • 人身事故、物件事故いずれの場合でも、責任の所在などの法律上、道徳上の処理に必要な証言が得られる。
  • とくに人身事故の場合には、救急治療に不可欠な事故原因を、医師や医療施設に情報提供できる。
  • 一方に余力がある場合には、オクトパスブリージングやバディブリージング(レギュレーターの交互使用による救援浮上)で、事故の防止または軽減が図れる。
  • 浮上したあとで、観察したことや行動の推移を確認することができ、あとあとの語らいがよりいっそう楽しいものになる。 
 

[水中でのコミュニケーション]

 バディ潜水をより安全でよりよいものにするには、水中でのコミュニケーションすなわち合図をきちんと覚えておいてください。スノーケリングで、スキンダイビングで、そしてスクーバーダイビングで、合図がありました。スクーバーダイビングではこれらをすべて活用します。
 リンクしていますので、もう一度復習しましょう。

スノーケリングでの合図
スキンダイビングでの合図
スクーバダイビングでの合図