圧力の作用と習得するスキル(まとめ)

 スキンダイビングやスクーバダイビングには、身体におよぼす圧力の作用がいろいろとありました。圧力の直接的・間接的作用による障害を、まとめて高気圧障害といいます。

 これはたいへん!と思うかも知れませんが、まとめてみるとダイバーが、スキルとして習得することはそれほど多くありません。

 次表の青い部分のスキルを習得すればいいわけで、決してむずかしいことではありません。この結論を得るために、「なぜ、そうなのか?」を長々と説明してきたわけですが、この「なぜか」を知っているのと、知らないのでは、ダイビングで得られる楽しみも大きく変わってきます。

ダイバーの状態と受ける作用および症状

体得すべきスキル





























スクイズ

肺のスクイズ

スキンダイビングで水深40m近く潜らない(普通の人はできない)。
必ず息をいっぱい吸って潜る。

耳のスクイズ

耳抜きをする。風邪や寝不足に注意。身体のコンディションを整える。

副鼻腔のスクイズ

風邪や寝不足に注意。身体のコンディションを整える。

歯のスクイズ

虫歯の治療は完全にする。

マスクのスクイズ

マスクブローを怠らない。

ウエットスーツのスクイズ

水を通して空気を抜く。

ドライスーツのスクイズ

適正な吸気をする。











過膨張

中耳の過膨張

耳栓は禁物。フードには水を通して空気を抜く。

肺の過膨張
(エアーエンボリズム・気胸・縦隔洞気腫・皮下気腫)

急激な浮上をしたり、息を止めたりして浮上しない。
ダイビングの鉄則を守る。
BCDやドライスーツによる吹き上げを起こさない。























気体密度増加による気体の性質の発現によるもの

窒素酔い バディの動作確認と対処。窒素に慣れていく。身体のコンディションを整える。
二酸化炭素中毒 換気のいい呼吸に心掛ける。
酸素中毒 空気で深く潜らない。
一酸化炭素中毒・オイル蒸気肺炎 タンクの空気のチェックをする。












気体密度の低下によるもの

酸素欠乏症 スキンダイビングで無理に長く潜らない。ハイパーベンチレーションは行なわない。

気体溶解度の低下によるもの

減圧症 無限圧潜水に心掛ける。潜水深度にたいする無限圧潜水時間の励行。減圧表およびダイビングコンピューターの指示に従う。安全停止の励行。身体のコンディションを整える。

 安全で楽しいダイビングをするためにはスキルの習熟は当然ですが、メソッド(注1)ということも大切になります。地域によって、海や湖の環境の違い、予想していた条件と異なった、などよって対応もまた違ってきます。ダイビングを、どう展開するか、これがメソッドになります。習熟編では、ナビゲーション・ボートダイビング・ナイトダイビング・ディープダイビングという大枠でメソッドを解説しますが、そのときの状況でダイビングを組み立てることもメソッドに入ります。

【水中は安定した世界】

 波の項でお話ししましたが、水中への波の影響は波長の約二分の一の深さまでです。例えば波長5mの波ならば水深2.5mより深いところでは、波の影響は受けなくなります。波長30mのうねりでも15m以深は、潮がなければ穏やかです。

 水中深く沈んだ船が長い間朽ちないで残っているのは、陸地で見られる風化作用や波浪による侵食などがないからです。その意味でも水中は非常に安定した世界なのです。

 スクーバダイビングにおいても、この波の影響の無い深さまで潜れば波に振られることもなく快適に遊ぶことができます。単純にいえばダイビングは、@潜降する、A水中を泳ぐ、B浮上する、ことですから、圧力変化がある潜降・浮上のときにさまざまなスキルが要求されるだけのことです。

 実技実習でインストラクターに教わりますが、最も基本となる潜降と浮上について説明します。

 

【潜降と浮上】

[一般的な潜降]
 左図はフィートファーストいう潜降の方法で、海面で浮いていたときのBCの空気を抜きながら足から潜っていきます。
 図は、BCホースから排気していますが、排気専用バルブを使用することもできます。

 フィートファーストの利点は、耳抜きがしやすいことです(肺と耳の位置関係)。

 初めての方に見受けられることですが、 BCの空気が抜けているのに、なかなか海面から離れられない人がいます。原因は、だいたい次のようなところにあります。


  1. 息を充分に吐いていない。
  2. 沈みかけたがすぐに海面に戻ってしまうのは、
    息を吸いすぎるために肺の浮力がでてしまうからです。
  3. フィンを動かしていて、上方への推力を働かせている。

 潜るということで心理的な動揺で息も荒くなり、水中という不安定なところでは足を自然に動いてしまうのも仕方がありませんが、スポーツは呼吸にあることを思い出して、器具(レギュレーター)の呼吸をしっかりマスターすれば難なくできるようになります。

 潜れないからといって、無闇にウエートを増やすことは、水中での動作性を悪くするだけなく危険(注2)でもあります。自分の適正なウエートの量で潜れるようになることが肝要です。

 この形でどこまでも潜るのでなく、水深1.5〜2m位まで潜ったら、目的方向にゆっくり泳ぎだせばいいのです。やはり水中は、泳ぎの姿勢が最も安定して動作の切替もスムーズにいきます。

 波があったり、潮の速かったりするときは、フィートファーストで悠長にもしていられないこともあります。この場合ヘッドファーストつまりスキンダイビングの潜り方で、いち早く水中に入ったり、海底に到着したりすることもあります。

 こんなこともメソッドのうちで、実習や慣熟でインストラクターが要領のつかみ方も含めて指導してくれるでしょう。

 

[浮上]
 浮上は、海底の斜面に沿って浮上する、潜降・浮上ロープを利用する、垂直に真っ直ぐ水面に向かって浮上する、などの方法がありますが、ここでは基本となる垂直浮上について説明します。

 基本はフィンの推進力で浮上します。浮上には浮上速度というものがありました。浮上速度を守るのはフィンが最も適しています。

 BCに空気を入れて、その浮力によって浮上する方法もありますが、排気が追い着かないと加速度的に速くなり、いわゆる吹き上げ状態になることがあります。この方法はどちらかというと、二次的なテクニックなので、フィンで浮上することをしっかりマスターすることが肝心です。

 フィンで浮上していても、浮上にともなって水中で押しつぶされていたBCの空気も膨らんできます。そのままにしていると、体積増加に伴なってやはり浮上速度が速くなります。余分な空気はそのつど抜くように心掛けてください。

 そして、水面に到達したらBCに空気を入れ浮力を確保します。BCへの空気の入れ方には、インフレーターの吸気ボタンで入れる、口からいれる、の二通りがありました。そのときの状況で使い分けます。

 

【スクーバで必要になった合図】

 スクーバダイビングでは、水面に戻るまで会話ができません。異常があった時も合図で知らせます。スノーケリング・スキンダイビングの合図の続きとして覚えてください。

 細かなコミニュケーションは、耐水紙で作った水中メモが市販されているので利用するといいでしょう。

 

        

水中メモ

                 

異常あり 危険(です、なものが近づいてきます)

         

        

      

私、空気が(ありません、きません) 私に空気をください

スノーケリングでの合図
スキンダイビングでの合図