それでも人は挑戦する

 スキンダイビングは、肺スクイズや酸素欠乏が発生するので活動に限界があります。しかし、世界は広しで、水深100m以上潜る人たちがいます。最近では150mも潜った人もいて、何と潜って上がってくるまでに3分以上もかかるそうです。これらの人たちの肉体的生理的な現象は、これまでの概念ではとても説明がつきません。ただ言えることは、果てしない挑戦意欲に満ち満ちている人たちで、肉体と精神を鍛えているのでしょう。

 競技としても確立していて、ヨーロッパで盛んになっています。スタッティックアプネア(水中で息をどれくらい止めていられるかを競う)、ダイナミックアプネア(水平に潜って、進んだ距離を競う)、コンスタントアプネア(どのくらいの深さまで潜れるかを競う)の3種目があります。

 一般にスキンダイビングで深さを求めることをフリーダイビングといっています。日本にも愛好者グループがあります。
  フリーと名の付くスポーツは、命がけで究極のスポーツ行為といえるでしょう。フリークライミングという岩登りがありますが、ザイルなどの補助具は一切使いません。重力に逆らってのことですから、落ちたらそれまでです。息を止めることは生命活動に逆らうことなので、フリーダイビングも究極のスポーツ行為といえます。

 深く潜ったリ長く潜ったりすることには、肺スクイズや酸素欠乏などの壁があるので、これを目指す人は、前述したような安全管理ができているグループに入って練習することが大切です。

 若く優秀なダイバーでもありガイドだった筆者の知人は、フリーダイビングに魅せられ単独で挑んでいて、酸素欠乏によって天に召されてしまいました。危険がわかっていながら、フリーダイビングの魅力には勝てなかったのでしょう。あらゆる分野における冒険者は、そのギリギリのところにある魔力に引き寄せられ、その困難を克服することに大きな喜びを感じているのでしょう。