タンクの強度・耐圧基準

【材質】
 タンク(容器)は法的には“一般継目なし容器”と言われ、スチール容器の場合は鉄鋼メーカーで製造された長尺の継目なし鋼管を所定の長さに切断し、高圧ガス容器として政府・所轄官庁より認定された高圧ガス容器製造事業所により高圧ガス保安法に従い設計・製造・検査され、容器肩部に各種刻印を施される。

 使用される材質としては、工業用や医療用などの継目なし鋼管製高圧ガス容器の場合はマンガン鋼が一般的であるが、スクーバダイビング用容器の場合その用途などからクロムモリブデン鋼が使われる。

 クロムモリブデン鋼はマンガン鋼に比べ、その化学成分として(Cr)とモリブデン(Mo)などを含み、高圧ガス容器としてマンガン鋼製容器にくらべ、より高強度が得られ、その結果より軽量化ができるという特性を持っている。

マンガン(Mg)

マンガンの添加により、強度、硬度、耐食性などの金属特性が改善されるので、鉄鋼および非鉄金属への合金添加剤として用いられる。たとえば、マンガン入り黄銅(真ちゅう)は、海水に対して耐食性があるため船のスクリューなどに使われる。
 

クロム(Cr)

クロム含量が50〜70%、残りが鉄ならびに数%以下の炭素およびケイ素を含む合金をフェロクロム(フェロアロイ)とよび、クロム鉄鉱の直接還元によって製造される。これをクロム源として鋼に添加して精錬されたクロム合金鋼は、耐食性および機械的に優れた性質を示し、クロム含量が12%以上のものをステンレス鋼とよぶ。
 

モリブデン(Mo)

金属モリブデンは広い温度範囲にわたって機械的強度に富み、ステンレス合金、耐火合金などに使用される。

【使用圧力】
 工業用や医療用の高圧ガスでは、現在我が国ではその充てん圧が 14.7 Mpa( = 150 kgf/cm2 )が一般的であるが、スクーバダイビングの市場では、19.6Mpa ( = 200kgf/cm2 )が一般的になっている。

【耐圧基準】
 スクーバ 容器は高圧ガス保安法の適用をうけ、容器の製造に先立ち関係機関(高圧ガス保安協会)で型式承認をうける。

 また、製造された容器は高圧ガス保安法に則り、全ての容器についてその質量、内容積、膨張特性などが測定・検査され容器の肩部に所定の刻印が打刻される。 また組試験として、その製造ロットに従い圧力サイクル試験や破裂試験を高圧ガス保安協会の検査官の立ち会いの下で行い品質の確認をした後、高圧ガス保安協会の検査完了マーク(KHK)を打刻する。

 充てん圧 19.6 MpaのSCUBA 容器の場合、圧力サイクル試験は0Mpa から32.7 Mpa ( = 耐圧試験圧力=最高充てん圧 x 5 / 3 )の間の12,000 回の繰り返し加圧を行い容器に変形または漏れが無いことを確認する。

 さらに、容器は品質確認のために水圧による破裂試験が行われる。容器に水圧をかけ、容器が破裂するまで圧力をあげて破裂した時の圧力を測定し、その圧力が所定の圧力以上(=最高充てん圧力x2.7 〜5.4の範囲。例えば、充てん圧 19.6Mpaの容器の場合は 52.9 Mpa から105.8Mpa の範囲)であることを確認し、破裂した時の破裂の始まった部位、破裂の形態などが定められた状態であることを確認する。規格では破裂は胴部分の1カ所の裂け目で破裂し、また破裂した破片は飛散しないことが求められている。

【表面処理】
 スクーバダイビングという用途からこれらの鋼製容器は、その内面及び外面の両方にそれぞれ次の表面処理が施されている。
  内面は、容器内部が錆びるのを極力防ぐために電気亜鉛メッキを施してある。
  外面は、防錆の目的に加え“ひっかき”などの衝撃等に極力耐えられるべくメタリコン処理(亜鉛溶射)を施してある。  これらの内外面の表面処理により、適切な方法で容器を使用し管理されればこれらの容器は長く有効に活用できる。

(旭製作所:繁田賢太郎)

【アルミタンクの材質】
 アルミ合金6351、アルミ合金6061の2種類があります。

 2000年の沖縄でのアルミ(6351 合金)製容器の破裂事故に続き、昨年さらに6061 アルミ合金製容器にも、ネジ部等にクラックのあるアルミ製スクーバ 容器が発見され、監督官庁である経済産業省は再三に亘り各都道府県関係部門に、アルミ製スクーバ 容器の使用に安全を期すよう文書で通知しています。2001年末にいたり、最終的にアルミ製スクーバ 容器について、毎年容器ネジ部を中心に容器検査所での目視検査を義務づける旨方針を決め、現在省令及び基準を改定すべく手続きを行っており、2002年度中には施行される予定です。この改訂省令、改訂基準が施行になると(現時点で言えることは)アルミ製スクーバ 容器は省令、基準の施行の日からは1年以内の容器再検査もしくは法定目視検査の検査マーク(刻印)の無い容器には空気を充てんする事ができなくなるようです。