起潮力

 月や太陽の引力が地球上の各地点で少しずつ異なるため、海水の移動や地球の変形が生じ、潮汐(ちょうせき)がおこります。このような天体引力の相違によって生じる力を起潮力といいます。

 地球と月は、共通重心の周りを1恒星月(約27.33日)で1周する円運動をしており、全体として引力と遠心力がつり合っています。遠心力は地球上のどの地点でも同じであるが、月の引力は、その地点と月までの距離の2乗に反比例するので、月に近い地点では大きく、遠い地点では小さくなります。このため、月の真下では月のほうへ膨らみ、反対の地点では、月の引力より遠心力が大きいので、月と反対のほうへ膨らむように作用します。中間部ではへこむようになる。
 つまり起潮力は、地球をラグビー・ボール形に変形する作用をしています。太陽の場合も、月と同じ理由で起潮力が生じます。

 起潮力の大きさは、「天体の質量に比例し、地球からの距離の3乗に反比例する」。太陽は月よりはるかに質量が大きいが、距離が遠いので、起潮力は月の半分弱(平均で46%)です。その他の天体は、地球からきわめて遠いか、質量が小さいので、起潮力が非常に小さく、無視できます。月と太陽の起潮力の大きさは、もっとも大きい潮差で、それぞれ53.44センチメートルと24.6センチメートルです。実際の海洋では、海陸分布や海水の慣性などのために、起潮力と潮汐の大きさ・位相とはあまりつり合っておらず、干満がほとんどない所や、潮差が10メートル以上に達する所などができます。 

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