[魚介等の水産物をとってはいけない]
古くは、日本人の動物性蛋白質の摂取の大半は、魚介類に頼っていました。そのため、ぐるり日本の沿岸は食糧生産の場として、かなり昔から入り合い権が確立され、地域ごとに漁場の範囲が決められていました。いまは漁場の範囲を漁業権漁場といっていますが、この慣習(注1)は今の漁業法の根底をなすものと聞いています。
簡単にいえば、漁業法は漁業権漁場において漁業権者が漁業を営む権利で、漁業権を持たない者が水産物の採捕はできないということなのです。漁業権を代表する機関は各地の漁業協同組合となりますが、漁業を営む者つまり漁師は漁業協同組合に入り漁業を営む権利を得るわけです。
漁業にはその漁場において、定置網漁業、トロール漁業、潜水漁業、養殖漁業などの方法や漁期など事細かに決められていて(注2)、漁業者はそれらの権利を漁業協同組合から取得して漁業を営むのです。
平たくいえば、漁業権者は共同漁業権漁場で排他的に水産物の採捕ができるということです。ですから、スノーケリング・スキンダイビング・スクーバダイビングを楽しむものは水産物の採捕をしてはいけないのです。これをすると密漁となり、場合によってはきついお咎めを受けることになります。ある地域の漁業権者であっても、となりの漁業権漁場で漁をすると密漁になります。
魚介の好きな日本人は、海に潜れば自由に魚や貝や海草をとって食べられると思っている人が多かったと思います。日本のダイビングの初期では、このような法律があることがダイバーの中にも知らなかった人も多かったので、「漁師VSダイバー」という対立構造も生まれたのです。
時代が進むにつれ漁業者とダイバーとの理解も深まり、今ではダイバーを積極的に受け入れる漁業協同組合も増えています。これからみると、ダイビングの発展は、漁業法や漁業調整規則など漁業をとりまく法律を、一般の人に認識させたことに大きく貢献したといえます。
[漁業協力金]
ダイビングにいくと漁業協同組合に、漁業協力金とか入海料とかの名目で何がしかのお金を支払って潜ります。多くは地元のダイビングサービス業者が代行して徴収しています。釣りなどの遊漁と違って、海に潜るのにお金を支払うといった根拠は不明ですが、ダイビングの発展とともに慣習となっています。
[スポーツ狩漁としては]
スポーツとして魚を水中銃を狩漁すること(スピアーフィッシングといいます)は、陸上の狩猟のようにルールが定められてはいませんからできません。各都道府県で定める漁業調整規則では、だいたいのところでは「発射装置の付いたモリ等」での採捕は漁業者に対しても禁止しています。
しかし、漁師さんと個人的に話しをつけてスピアーフィッシィングを行っている人もいますが、厳密にいえば違反です。欧米では、さまざまなルールを設けてスピアーフィッシングがスポーツとして確立され、競技会も行われています。スピアーフィッシングを指向するダイバーは、これらの国にならい地道な運動をしていかねばならないと思います。
[蛇足]
自分の船(ボート)で海に出て潜っていると、以上あげた諸般の事情より、密漁者と間違えられ無用なトラブルを引き起こす結果ともなりかねません。この意味でも、自分の船(ボート)で潜るということは一般的ではありません。
(注1)
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一説には平安時代の頃からで、後に慣習法として位置づけらたということです。
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(注2)
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共同漁業権漁場といいます。
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