検証酸素中毒

 一般的なスクーバ潜水では酸素中毒に罹りにくいものです。それを検証してみます。

[急性型では]

 アメリカ海軍では、酸素分圧1.0atmから1.6atmまでの許容曝露時間(注)を決めてあります。最大酸素分圧1.6atmでは30分です。
 空気の酸素分圧は大気圧で0.2atmですから1.6atmの酸素分圧になる深度は70m(絶対気圧8Atm)です。

 果たして一般的なスクーバで、70m30分のダイビングは可能でしょうか。検証してみます。

@空気消費量から
 10リットル200気圧タンクだったとします。1分間に18リットルを使うとします。単純に計算すると、空気消費量からの潜水時間は約14分で、空気がもたないので30分は潜れません。また12リットル200気圧のダブルタンク(2本連結)を使ったとしても、空気消費量からの潜水時間は約33分になりますが、ギリギリで何とも心もとないものです。

A減圧時間から
 アメリカ海軍の標準空気減圧表の最大深度は190フィート(57メートル)までしかありません。同海軍の特別潜水用標準空気減圧表を使ったとしても、230フィート(70メートル)の潜水では合計浮上時間が109分となり、一般スクーバダイバーにとってまったく不可能な潜水となります。ちなみに、英国海軍の「深い潜水の空気減圧表」では、72メートル25分で合計浮上時間は118分、日本の労働省による減圧表では244分以上の浮上時間が必要で、これも事実上不可能です。

 まして、私たち一般スクーバダイバーは、無減圧潜水を旨としますので、こんなに深い潜水はできません。空気を使用したスクーバダイビングでは、急性型酸素中毒の心配はまずありません。それに70メートルまでには、窒素酔いという関門もあります。

[慢性型では]
 
 1気圧程度の圧力の酸素は、私たち一般スクーバダイバーにとっても無縁ではなさそうです。大気圧すなわち1atmの酸素分圧になる深さは40メートルです。この深さは何とか到達できそうな深さです。慢性型酸素中毒は、肺活量の減少をみるということですが、どういうことかいまひとつはっきりしませんが、肺活量が10パーセント減少するのは、1atmの酸素つまり水深40メートルで空気を30分強吸っていると起きてくるようです。急性型と同じように検証してみましょう。

@空気消費量から
 10リットル200気圧タンクだったとします。1分間に18リットルを使うとします。単純に計算すると、空気消費量からの潜水時間は約22分です。やはり30分は潜れません。仮に12リットル200気圧のダブルタンクを使えば、空気消費量からの潜水時間は約53分になります。

A減圧時間から
 アメリカ海軍の標準空気減圧表では、40メートル22分の潜水では約24分、40メートル53分の潜水では約87分の合計浮上時間が必要となります。潜水時間と同等あるいはそれ以上の浮上時間は、私たちにとって意味で、たとえやったとしても減圧用タンクの補給やデポ、減圧停止深度の維持のことを考えるととてもできることではありません。また長期間続けるとということですから、レクリェーションダイバーとしてはその機会は遠のいています。

 もう一度、私たち一般スクーバダイバーは、無減圧潜水を旨とすることを確認しましょう。水深42メートルの無減圧限界時間は10分です。