DAN「潜水事故における酸素供給法」とは・・・?

 ダイビングでは「急性減圧症:いわゆるベンズ」「エアー・エンボリズム:肺の圧外傷による空気塞栓」などを起こしてしまった場合、あるいはその他の原因で意識不明や呼吸停止になってしまった場合など、通常の応急救命手当だけでは簡単に対処出来ないことがおこります。また、救助要請をする間や、救急車を待つ間などにも重篤な事態になることもあります。

意識不明や呼吸停止になった状態では、一番身近にいる人の「応急手当とCPR」によって救命手当が行われるべきです。最近の「救命手当講習」の中では、その対処法を練習するようになっており、市民レベルでもその必要性が理解されるようになってきています。
しかしそれに「急性減圧症」や「空気塞栓症」などが加わった場合、その後の症状の悪化防止を考えると、どうしても早めの「酸素供給」が必要不可欠となります。

実際の専門医療機関で潜水事故に対する治療の現場では、通常酸素を投与すると共に、もし急性減圧症が疑われるときは、その事故者に対し酸素再圧治療を行うことが唯一の治療法となっています。
この「DAN潜水事故に於ける酸素供給法」は、これらの潜水事故に対し、「応急手当の延長として」その事故現場(あるいは病院への移動中)で「酸素供給」を行って「症状の悪化防止と軽減」目的で、スタートしたものです。

現在、欧米では救急法(ファーストエイド)の一部として、医療者以外でも必要に応じて酸素供給を行うことが認めらていますが、日本国内では医療者以外の人が酸素を他人に与えることは医療法上認められず、潜水事故の現場に於いても酸素供給は行われていませんでした。(日本国内では酸素は医薬品として規定されていますし、酸素供給器材は薬事法及び高圧ガス保安法に規定されています)。
しかし、潜水事故の現場に於いては、酸素を供給することにより症状の改善が得られるのです。

そこですでに国際的に行われている標準手法(酸素供給に関する知識・酸素とは・酸素供給器材の扱い方など)を専門家やインストラクターにだけではなく、広く一般のレジャーダイバーにも習得してもらって、国内と国外の場合に分け、対処法を決定し、潜水事故に限って「イザ!」という時の酸素供給法に備えようというものです。
(尚、この講習は実際の潜水事故現場の状況を考えて、国内法の規定を説明の上、国内の場合と国外の場合に分けて実施されます。)

現在、DANJAPANでは、DANJAPAN認定潜水指導団体の認定のレジャースキューバダイバーに酸素を供給する講習を行っています。ですから、単に講習を「酸素供給法」と呼ばずにDAN「潜水事故に於ける酸素供給法」講習と呼んでいます。

「CPR講習」について

 DAN「潜水事故における酸素供給法」講習では、CPR講習は行いません。CPR講習は、各潜水指導団体がファーストエイドの講習で取り扱っています。
DAN「潜水事故における酸素供給法」講習では、CPR講習を受講の条件としてはいませんが、酸素供給法自体、単独のものではなく、ファーストエイドの一環に位置づけられるものです。レジャーダイバーの事故環境においては、まずファーストエイドを行い、状況に応じて、DAN「潜水事故における酸素供給法」を施すことになります。このため、本コースを受講前、もしくは同時に各潜水指導団体のファーストエイドコースを受講するようにしてください。
※DAN JAPANでは、世界的に認知されているEMP社のCPRコースを推奨しています。

法令について

日本では、酸素の投与は医師、もしくは医療従事者のみが行うことに規定されています。この規定の中で、DAN JAPANでは、DAN JAPAN会員が、レジャーダイビング中に潜水事故に遭った際、自分で酸素を吸うこと、(もしくは同意を受けたバディが供給すること)を想定しています。
また、酸素ボンベ、レギュレータ、デマンド式吸気バルブ、ノンリブリーザーマスク等は医療器具であり、薬事法の規定似合ったものを使用してください。
さらに酸素ボンベは、高圧ガス保守法の下にあります。これらの規定を基づいて、取り扱うようにしてください。