残圧計

 潜っていて、いちばん気になるのが空気の残量です。それを知らせるのが残圧計です。いわゆる圧力計でブルドン管式のものが大半を占めています。工場などで使う普通の圧力計とは違い機構部は密閉されています。

 もし、ブルドン管から空気が漏れたら、工場などで使う普通の圧力計はケースに空気を逃がす孔があるので、ケースが破裂することはありませんが、残圧計は密閉しているのでケース内に過大な圧力がかかりケースを破裂させることがあります。

前項でいいましたが、高圧がかかるところなので、残圧計の取扱いには注意を要します。

 タンクにレギュレーターをセットしてバルブを開けるとき、急激に高圧がかかりますから、次のようなことに注意してください。

 ○ バルブは、徐々に圧力がかかるように、ゆっくりまわして開けます。

 ○ このとき、残圧計は顔から離して見るようにします。

 もうひとつ、高圧ホースでも中圧ホースでも、ファーストステージの付け根部分にテンションがかかります。よく、ホースを折り曲げるようにして持ち運んだり、仕舞ったりする人がいますが、輪を作るようにするなどして付け根部分にテンションをかけないようにすることです。無理に曲げるととホースの痛みが早まります。ときたま、大きな音とともにホースが破れることがありますが、たいていはこの付け根部分です。普段からの点検を怠らないようにしてください。


【残圧計の表示】

 数年前、圧力に表示単位が改正されました。天気予報の気圧がミリバールからヘクトパスカル(SI単位:国際単位系)に変わったように、圧力計の表示もパスカルあるいはバールに変わりました。
 なじみが深い、キログラム平方センチ(kg/cm2)からパスカル(Pka)やバール(bar)変わりましたが、数値的にほぼ同数なので圧力のイメージは変わりません。

 1kg/cm2=98.07kPa=0.9807bar ⇒ 1kg/cm2≒100kPa≒1bar

 残圧計には、バール(bar)で表示してあるものが多くなりました。つまり200(bar)は、ほぼ200(kg/cm2)です。

 

【潜水における空気消費量】

 このタンクでどのくらいの時間潜っていられるの?。素朴な疑問です。レギュレーターは自動的に、ダイバーがいる水深の圧力(環境圧)と同じ圧力の空気を送ります。すなわち、水深10mなら2気圧、20mなら3気圧というようにです。ですから、ダイバーは、水深10mなら水面(陸)にいるときの2倍、20mなら3倍の量の空気(注)を吸っていることになります。

 例えば、ある運動量で水面(陸)で毎分20リットルの空気を消費しているとすれば、水深10mなら40リットル、20mなら60リットルとなります。すなわち、水深によって空気消費量は違い深くなるいほど多くなります。
 この例で、少し細かく計算しておきましょう。

 使用タンクは、10リットルで、充てんされている圧力は200(kg/cm2)とします。
 このタンクに入っている空気の体積は、タンクの容積と充てん圧力の積なので、2,000リットルです。
 例えば、毎分20リットルの空気の消費とすると、各水深の環境圧との積が、その深度の消費量になります。
 このタンクで潜っていられる時間(空気消費量からみた潜水時間)は、2,000リットルを各水深の消費量で割ったものです。
 

水深(m)

環境圧(周囲圧)

消費量

空気消費量からみた潜水時間

 0

1.0

 20

100 

 5

1.5

 30

66

10

2.0

 40

50

15

2.5

 50

40

20

3.0

 60

33

25

3.5

 70

28

30

4.0

 80

25

35

4.5

 90

22

40

5.0

100

20

 空気消費量からみた潜水時間は、次の式によって計算します。

    空気消費量からみた潜水時間:T
    タンクの容積:V
    充てん圧力:P
    毎分の消費量:V
     
水深:D
  とすると、

    T=PV/(1+(D/10))V0    ・(D/10)は絶対圧力

 ダイバーにとっては、自分は毎分どのくらいの空気を消費するのだろう、と気になってきます。運動量によって違ってきますが、ある一定の水深を何分か潜り泳ぎ、その使った圧力から知ることができます。機会があったら一度やっておくといいでしょう。

    残圧計をみて、最初の圧力を:P
    何分か潜った時間あとの圧力を:P
    潜る水深:D
    何分かの時間(潜水時間):T

とすると、

    V=(P−P)V/T(1+(D/10))

で計算できますが、ある水深で使った圧力の(P−P)だけでも知っておくと、何かにつけて参考になります。

(注)

肺の体積からすると、密度の高い空気ということになります。また濃度の高い(濃い)空気ともいえます。

 

【空気は残す】

 前述の空気消費量の計算は、単純にタンクが空になるまで使ったとしての計算ですが、実際のダイビングでは次のようなルールがあります。

 残圧計の表示盤を見ると、0〜50barの目盛のところは赤く塗ってあります。ここはレッドゾーンといって、この50barの空気は、浮上そして水から出るために必要な最低限の空気です。「まだ、50barもあるから潜っていよう」、という空気ではありませんから誤解してはなりません。ダイビングは水に入ってから出るまでですから、ダイビング活動によっては浮上そして水から出るために要する空気も違ってきますから、いつも50barだけ残しておけばいい、というものでもありません。そこは、ダイビング計画にかかわってきます。
 200(kg/cm2)充填されているタンクは、実質150kg/cm2)までしか使えず、空気消費量からの潜水時間は前表よりも短くなります。