ウエート

【ウエート】
 ウエットスーツを着ることは、ある意味で空気を着ていることになります。これで海に入れば身体は浮き過ぎ、潜るどころか泳ぐのもままになりません。逆に、ウエットスーツを着ていれば沈まず溺れることも少なくなるといえます。
ウエットスーツを着て潜るには、このウエットスーツの過剰な浮力を無くさなければなりません。そこでお腹にウエート(錘)を巻きます。

 ウエートは、ウエート(錘本体)、ベルト、バックルで構成され、一体のものとして、ウエートベルト単にウエートと呼んでいます。

[ウエート(錘本体)]
 鉛でできています。1個が1kgのものと2kgのものがあります。鉛をプラスチックで包んだカラフルなものもあります。

[ベルト]
 ナイロン性のベルトで、標準の長さは130cmです。ウエートの穴にベルトを通さないですむ、ポケット式もあります。

[バックル]
 金属製とプラスチック製があります。

 

【ウエートの量】

 ウエートは、多すぎれば身体が沈み、水面に浮いているのがつらくなります。また、少なすぎれば、なかなか潜っていきません。多すぎても少なすぎても具合が悪いので、自分にあったウエートの量を探さなければなりません。

 ウエートの目的は、ウエットスーツの浮力を消して、裸で海に入ったときの浮力すなわち「97%は水の中」という状態を作ることにあります。

 ウエートは、ウエットスーツの厚さやスタイルや重ね着などで量も変わります。3mmのウエットスーツのときは、5mmのウエットスーツよりもウエートの量は少なくなり、ワンピースよりもジャケット+ロングジョンの方がウエートの量は多くなります。その都度、自分の身体全体をみて、ウエットスーツの占める割合でウエートの量を調整します。ですから、自分の標準のウエート量を知り、ダイビングの状況で増減します。

 例えばウエットスーツが厚さ5mmのものでみてみます。
 ワンピースとジャケット+ロングジョンでは浮力が違いますが、一般的にジャケット+ロングジョンで体重の10分の1が標準ウエート量の目安となります。体重60kgの人はウエート6kgということです。しかし、同じ体重であっても、脂肪質か筋肉質かで、個人によっても固有の浮力も違うので、初めは細かく調整します。最初に標準ウエートを探してしまえば、後はそれを基準にして調整すればいいので、面倒くさがらないでやっておくことです。むろん、これは実習項目ですから、インストラクターの下で行なってください。
   

1.

調整のために、ウエートをベルトに付けたり外したりするのもたいへんなので、体重の10分の1のウエートから1kg少なくウエートベルトに付けます。そして1個は手に持って、海に入ります。そのとき、インストラクターといっしょに行き、インストラクターに1〜2kg位余分にウエートを持っていってもらいます。
 

2.

足が付かなくなる深さのところまで行き、立位の姿勢になります。
 

3.

そこで息をいっぱいに吸って、少しの時間吸ったままの状態でいます。すると身体は少し浮いて、目線が水面あるいは水面より上がります。
 

4.

今度は、息を思いきり全部吐き出します。ちょっと苦しいですが、やはりこの状態でいます。すると身体は徐々に沈み、頭まで水中に没します。沈んでいくことが分かったら、すぐに水面に戻ってください。このままでいると、沈みぱなしになってしまいますから。
 

5.

このように、水面で息をいっぱい吸ったら浮いて行く、いっぱい吐いたら沈んで行く。この状態が、自分の標準ウエートです。浮き上がりが悪いときは、手に持っていたウエートを離して同じことをやり、沈みが悪かったらインストラクターからウエートをもらい、同じことをやってみてください。

 息を吸うと浮く、息を吐くと沈む、これは肺が膨らんだり縮んだりして浮力が変化する現象です。

 ここで、整理しておきましょう。スキンダイビングでは、浮力が変動するものがありました。それは肺とウエットスーツです。圧力によってそれらの体積が減少しますから、潜りやすくするためにウエートを増やしたりすると、水面に戻るまでつらい思いをしますから避けるようにしてください。

 

【クイックリリース】

 バックルは、ベルトを挟んで押さえる方式になっています。ウエートベルトをお腹にセットすると、ベルトが余ったようになります。この余った部分はそのままにしておきます。邪魔だからといって、お腹のベルトに巻きこんでおくようなことはしないでください。ウエートは、潜るために必要ですが、自分あるいは一緒に潜っている仲間が不測の事態になったりしたときは、ウエートはただの重量物でしかなくなります。こういった場合、ただちにウエートを捨てて浮力を確保します。ベルトの余った部分を引張るだけで、ウエートベルトは身体からはずすことができます。これを、クイックリリースといいます。


【ウエートベルトのつけ方】 

 ウエートをお腹に巻いたとき、ウエートがお腹側にくるように予めウエートをベルトにセットします。後ろ側にウエートが集まらないようにしてください。この理由は、もしブラックアウトなどで気を失い沈んでいったとき、後ろの方にウエートが集まっていると、仰向けになって沈んでいくので肺の空気は口から出ていき、肺に水が入ってしまいます。つまり溺水になりやすいのです。反対にお腹つまり前側にウエートが集まっていれば、うつ伏せになるので肺の空気は逃げにくくなります。こういった気配りが、安全へと繋がっていきます。

【淡水域ではウエートの量は減らす】

 淡水(真水)と海水では、海水の比重の方が大きいので海水中では淡水中より大きい浮力を得ています。標準ウエートは、海水で作ってきたので、湖、河川などの淡水域でのダイビングでは予めウエートの量を減らしておくことが肝要です。たったコンマ033の違いだからといって侮らないでください。実際このコンマ033は、相当効いてきます。海の標準ウエート量から約2kg減といったところです。


【ポンドとキログラム】

 外国に行くと、ポンド(lb)単位のウエートがありますので、参考までに換算単位をあげておきます。

換算単位

1ポンド(lb)≒0.45kg

1kg≒2.2ポンド(lb)

2ポンドの錘が約1キログラムです。