スノーケリングとは

海の中を見たい、もっと広く自由に海を泳ぎたい、そう望んでみても自分には遠い話しだ、と戸惑ってはいませんか。それは水泳ができないからという理由で踏み出せない人が多いと思います。でも、本講座で海の事柄を終えたので、お待ちかねのスノーケリング、スキンダイビング、スクーバダイビングと進めていきます。

 水泳ができないということは、息継ぎ(呼吸)が上手にできないということです。ほとんどの人は水に浮かぶので、息さえできれば自由に泳ぎまわれるのです。水泳の息継ぎの難しさを解決したのがスノーケルです。

  スノーケリングとは、スノーケル(水面に浮かんでいる状態や水面を移動している状態で呼吸する管)、マスク(水中めがね)、フィン(フリッパーともいう、足ひれ)の三つの道具を使って、水面に浮かんだり泳いだりしながら、海中を覗いたり観察したりする一連の動作をいいます。スノーケリングは簡単で、誰でもが海に親しみ楽しむことができます。

  またスノーケリングはスキンダイビングやスクーバダイビングへと続く、「道具を使って泳ぐ」ことの最も基本的な動作です。

 だいぶ古い話しですが、エルジン・キィアンビという人はその著書「スキンダイバー」の中で、マスク、スノーケル、フィンを「三種の神器」と表現しました。水面とはいえ水の中で、人の三つの基本機能の、息をする、見る、移動する、を実現可能にした神の道具のようなスノーケル、マスク、フィンを、ぴったりと言いあてています。

 マスク、スノーケル、フィンをまとめて三点セットといいます。
 スノーケリングは、「道具を使って泳ぐ」ことの最も大切な基本動作です。

 次項からは、その種明かしをしていきますが、スノーケリングをスキンダイビング(素潜り)に含める場合もありますが、スキンダイビングは、水圧(圧力)の影響などがあるので、本講座ではスノーケリングは水面活動ということで説明します。

  しかし、自然現象や道具の使い方などを、水面活動の範囲、水中活動の範囲、と厳密に分けられないので、説明が重複するときがあることをご了解ください。

 

【スノーケリングの重要性】

[スポーツとして]
 先に、スノーケリングはスキンダイビングやスクーバダイビングへ続く基礎中の基礎といいましたが、水泳同様水中運動としても有効です。

 そしてこの中にはもうひとつ大事なことが含まれています。それは、スノーケリングは眠っていた運動機能を呼び起こすという役目があるということです。最近シニアー世代の方がスクーバダイビングをはじめられることが多くなりました。若いときはそれ相応のスポーツをやっていた人でも、長年仕事に没頭して、ついつい自分の運動機能をどこかに置き忘れた人が多いものです。機械にたとえれば、関節などの駆動部の油切れというようなことになりますが、筋肉のしなやかさも失っています。歳をとれば肉体の機能は誰でも衰えてきます。鍛え直して夢よもう一度でなく、全身のしなやかさをある程度取り戻したり、運動機能の維持にも役に立ちます。

 水泳は重力から開放される全身運動として推奨されています。スノーケリングも同じですが、水泳とは違って運動としての激しさもなく、ゆるやかに始められます。スノーケリングによって身体のしなやかさを取り戻せば、スキンダイビング・スクーバダイビングのスキルもまごつくことなく習得できます。その上、知らず知らずのうちに「水の物性」ということも身に付いていきます。

 スノーケリングには充分時間をかけることが望まれます。

 蛇足ですが、水泳指導においてもスノーケリングということではないですが、足ひれ(フィン)を使っていちばん最初のバタ足の練習をさせる水泳教室も多くなってきています。

 

[フィールドワークの一手法として]
 自然をより知るために、フィールドワークすなわち野外科学の手法の成果は大きいものでした。フィールドワークは、百聞は一見にしかずで、そこに身を置く、ことによって自然や人文を解き明かすことです。陸上と比べ長らく置き去りされてきた観のある水中世界ですが、スノーケリングやダイビングも、近年フィールドワークの一手法として認識されきています。

 科学というと、何やらむずかしいことと思いがちですが、泳ぐ魚たちを、繁茂する海草を、岩場にへばりつく植物に似た動物などに感動したり、波や流れなどの海の事象に触れて驚嘆したりするでしょう。これがフィールドワークの原点で、誰しもが「科学」という言葉を意識することなく科学しているのです。

 スノーケリングやダイビングは、フィールドワークの対象を水中まで押し広げ、今では地勢・環境・生態などあらゆる分野で成果をあげています。しかし、水中ままだまだ未知で大きな課題として残っています。野外科学の一手法としてスノーケリングやダイビングの役割ももっと高まっていくに違いありません。その入り口としてスノーケリングは重要といえます。

 夏、海のシーズンのスノーケリングでタイドプール(注)や、実際に海に出て観察することはだれにもできます。海で遊びながら、子供には早いうちから観察眼を養い、大人には生涯学習として、の方法として有用な活動となります。

(注):

潮が引いたあと、潮間帯の岩場などに残る水溜まりのことです。

 

【ざつがく事典】

 クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライ、水泳種目はどれをとっても腕を使います。これによって胸板・上腕は発達します。競泳選手はその独特なプロポーションが美しいのですが、一般には極度に胸板・上腕が発達するのを嫌う人もいます。スノーケリングは、このような人にとっての水中運動としてとても有効です。