スキンダイビング

 スキンダイビングは、息をこらえて潜水すること(注1)ですが、もちろん前段階のスノーケリングは十分マスターしておかなければなりません。スノーケリングとスキンダイビング、スノーケリングとスクーバダイビングは、その技術において一体のものとしておかねばなりません。

 古来から伝わる海女(海士)の潜水がこれにあたります。最近は海女(海士)も、フィンやウエットスーツを使っていますが、その前はマスクだけ、またそれ以前は水泳ゴーグルに似た水中メガネだけ、もっと昔は裸眼で潜っていました。
 元来、潜るための道具はいっさい使わず裸一貫で潜ることを「素もぐり」といっていましたが、近年、ダイビングが盛んになるにつれ、三点セットなどの道具を使っても、息を止めて潜ることを「素もぐり」というようになりましたまた、潜水者に空気を供給する潜水(ヘルメット潜水やスクーバダイビングなど)と区別するために「息こらえ潜水」ともいいます。

 息をこらえている潜水ですから、潜っている時間は短く、普通の人ならば30秒前後位がいいところで、1分を越えて潜れる人はそれ相応の練習をした人です。

 スキンダイビングは、暖かい海ならば三点セットだけで、ウエットスーツを着用すればほぼ通年行なうことができます。スクーバダイビングに比べて用具が少なく、海を広く軽快に楽しむことができます。

 しかし、息をこらえることは、生命活動に反することですから、呼吸の仕組み、圧力が加わって(加圧)いくときの影響、逆に圧力が減って(減圧)いくときの影響など、いろいろと知っておくべきことがあります。

 次項から、それらについて解説しますが、海に入り(エントリーという)、そしてスノーケリングで泳いで、スキンダイビングポイントに着いたときからのスキンダイバーの動作パターンをあげてみます。

(注1)

英語圏ではスクーバダイビングを含めてスキンダイビングとしているところもあり、日本でも以前はそういっていましたが、最近は息をこらえて潜ることと、スクーバを使って潜ることを分けていうようになりました。

 

【スキンダイバーの動作パターン】



ダイバーの動作

ダイバーにかかる圧力と作用

圧力の状態

生理的なことへの圧力の作用

直接的作用

間接的作用

スノーケル呼吸。
ゆっくり移動しながら、あるいは浮き身で呼吸を整え、気持ちを落ち着かせる。

大気圧

なし

なし

スノーケルから息を胸いっぱいに吸って、止める。

大気圧

なし

なし

息をこらえて、水中へ潜っていく。
潜降(ディセント)という。
圧平衡動作(マスクブロー、耳抜き等)。

連続する加圧

含気部位(注2)の収縮

肺内酸素の減少と二酸化炭素の産生および蓄積による影響

ブラックアウトの要因

締め付け
(スクイズ)

息をこらえている。
ある深さで止まるかその深さで水平移動。

その深さの圧力

圧平衡すれば、なし

息をこらえている。水面に戻る。
浮上(アセント)という。
自然に圧平衡。

連続する減圧

含気部位の膨張
(エクスパンション)

水面到達後、
息を吐いてスノーケルクリアー。

スノーケル呼吸。

大気圧

なし

なし

スノーケル呼吸。
ゆっくり移動しながら、あるいは浮き身で呼吸を整え、気持ちを落ち着かせる。

大気圧

なし

なし


(注2)

人体が持つ空気の入っている体腔(肺、耳、副鼻腔などで含気体腔ともいう)と、潜水するためにできる空間(マスク内空間など)をいいます。

 

 以上が、スキンダイビングのパターンで、このパターンが繰り返されます。 

 1と7は同じで、潜る前には水面に浮かんで休憩を充分とることが大切です。休憩しないで、連続的に潜ることはよくありません。理由は、体内二酸化炭素の蓄積が二酸化炭素中毒の原因となります。スキンダイビング後頭痛を訴える人がいますが、これも二酸化炭素中毒の一種です。

 は、スノーケルの中に息を吐いて、その勢いでスノーケル内の水を吹き飛ばします(注3)。一息で出なかったら、水を吸いこまないようにソロソロと空気だけを吸って、また吹き飛ばしてください。

 3〜5、つまりスキンダイビング(素潜り)で水中にいるときは、息を吐いてはいけません。吐くと、肺の中の酸素を捨てることになります。これは酸素欠乏を誘発する原因ともなります。

 表に示したように、3〜5の動作は、直接的にも間接的にも圧力の作用を受けます。ここが、ダイビングの基礎知識として大切なところのひとつです。順を追って次項より解説します。

(注3)

スノーケルクリアーの置換法という高等技術がありますが、それは実習でインストラクターに教わってください。