止血法

直接圧迫止血法(圧迫包帯法) 間接圧迫止血法(指圧止血法) 止血帯法 必ず医師の手当て

【大出血】

 人間の血液量は、成人で体重の約13分の1(体重60kgの者は約4.6kg)といわれていますが、血液量の20%が急速に失われると出血性ショックという重い状態になり、50%失われると失血死を招きます。

 普通に潜っていて大出血を起こすような怪我はあまり考えられませんが、近年ダイバーが、ダイビングボートや航行する船に轢かれ大出血を伴う事故が報告されています。このほか、鮫などの大型魚に咬まれて大出血を起こすということも考えられますが、一般ダイバーが襲われたということはほとんど聞きません。

【出血の種類と特徴】

 出血には、動脈出血・静脈出血・毛細血管出血があり、体表に傷を受けて外部に出血するものを外出血、身体の内部の出血を内出血といいます。血管の種類によって出血の特徴は次のようになります。
 

出血の種類

出血の状態

出血の色

出血量

動脈出血

心臓の拍動に一致して間けつ的に、脈を打って吹き出る。

鮮紅色

非常に多い。失血死の危険がある。

静脈出血

同じ強さと速さで持続的に流れ出る。

暗紫色

多い。

毛細血管出血

徐々に滲み出る。

暗赤色

少ない。

 

【止血法】

 出血のファーストエイドは外出血に限ります。圧迫包帯法が多く採用されています。また動脈の出血で圧迫包帯法で止まらないときは止血帯法が用いられます。

[直接圧迫止血法(圧迫包帯法)]

 出血部に清潔なガーゼ、ハンカチなどを直接あて、強く圧迫して包帯する方法です。多くの出血はこの方法で止血することができます。しかし、太い血管、特に動脈出血では、この方法では不十分で、大出血をおこして危険を招くので他の方法を施さなければなりません。また、圧迫している包帯がゆるんだときや、この方法で不十分な場合には、血液がにじみ出るばかりでなく垂れて落ちます。この場合には包帯を締めなおすか、他の方法で止血します。

 なお、圧迫包帯を施した後は、患部を心臓より高くしたり、冷やすと止血の効果があがります。

[間接圧迫止血法(指圧止血法)]

 出血部よりも心臓に近い動脈部に指頭、特に親指を動脈にあてて、骨のあるほうに向かって強く圧迫して止血する方法です。この方法は動脈出血のときに用いられますが、動脈が細いときは直接圧迫止血法で充分です。

 突然の出血で、包帯などがない場合の一時的は止血や、動脈出血の場合に直接圧迫法に併用すると効果的です。

 この方法は圧迫部位の習得がむずかしいのですが、船に轢かれた場合など、どのようなタイプの出血になるか予想できないので、ダイバーとしては覚えておいたほうがいいでしょう。指圧部位は次のところになります。

出血部位

動脈

指圧部位

@

頭部や顔面

総頚動脈

鎖骨の中央部より約3〜4cm上部(喉ぼとけの高さのところを、頸椎に向かって押す。

A

ひたいや側頭部

側頭動脈

外字孔の前、約1cmのところを頭蓋骨に向かって押す。

B

あご

下顎動脈

下あご中央部を下顎骨に向かって押す。

C

上腕部

鎖骨下動脈

鎖骨の上部の窪みに親指を入れ、鎖骨の内方向1/3部を第一肋骨に向かって押す。

D

前腕部

上腕動脈

上腕の内側、上腕二頭筋と上腕三頭筋の間を上腕骨に向かって押す。

E

(じょう)骨動脈

脈拍をはかる場所を橈(じょう)骨に向かって押す。

F

手の指動脈

指の付け根を親指と人指し指でつかみ、指骨に向かって押す。

G

大腿部

大腿動脈

鼠径(そけい)部の中央部を大腿骨骨頭に向かって押す。

H

下腿と足部

膝窩(しっか)動脈

ひざの裏側にあるくぼみを頚骨(けいこつ)に向かって押す。

I

足の指

足の指動脈

指の付け根を親指と人指し指でつかみ、指骨に向かって押す。

(運動医学:大修館書店)

 

[止血帯法]

 四肢の太い動脈による出血で圧迫包帯法では止血が困難な場合に行います。

 出血している部位より心臓に近い側に三角布や包帯あるいは太いゴム管などを巻き、これを強くしばったり、棒などを通しねじり上げたりして止血をはかります。この際、針金や細い紐などは血管を損傷させるので、止血帯はできるだけ幅の広いもの(3cm以上)を用います。

 この止血法は、血管を強く圧迫するので、止血帯を施した部分より抹消部の停止します。そのために長時間たつと、抹消部は循環障害をおこして壊死に陥ります。これを防止するため、15〜20分毎に止血帯を少しゆるめて抹消部に血液を送るようにします。

 注意として、この方法は循環障害をおこすおそれがあるので、太い動脈からの出血時や、事故者を運搬するために間接圧迫止血法で不十分なとき以外は乱用してはなりません。

【必ず医師の手当て】

 事故者が、人工呼吸・心肺蘇生で回復しても、止血ができても、最後は必ず医師の手当てを受けなければなりません。生半可な判断ですますと、あとになって合併症や感染症をおこす危険もあります。