スクーバダイビング

 さあ、いよいよスクーバダイビングです。

 海の、波や流れなどの現象やスノーケリングでは、スノーケル、マスク、フィンを中心に、呼吸、見る、移動するといった、身体の基礎的な運動に関して,スキンダイビングでは、圧力や水温が身体におよぼす影響について学んできました。

 ここでこの講座のあり方について修正しておかねばなりません。海洋編、スノーケリング編、スキンダイビング編のカテゴリーに分けて説明しましたが、これからのスクーバダイビング編も含めて、知識的にも実技的にもダイビングという大きな活動にくくられます。
 スノーケリングの知識や実技はスキンダイビングとスクーバダイビングの基礎に、スノーケリングとスキンダイビングの知識や実技はスクーバダイビングの基礎に、なっているということです。このことを十分認識して進んでください。
 
 SCUBAおよびスクーバダイビングは外国から来たものですから、ふだん聞きなれていない言葉、それも外来語そのままで使っていますから、それを覚えるのも結構たいへんなことです。
 また、呼吸を水中でするわけですから、身体にも生理的な問題もでてきます。それらすべてをいっぺんに覚えられませんから、各カテゴリーにある問題、例えば物理的なこと、生理的なこと、器材的なことなどを、ジャンル別にして解説してきました。
 一見、遠回りのように感じられる方もいると思われますが、スクーバダイビングは、スノーケリングやスキンダイビングの延長線上にあるものと理解してください。

 

 まず、スクーバ(SCUBA)は、どんな潜水器かを表にしてみました。
 スクーバは、軟式で、自給式で、開放式で、応需式で、空気式の潜水器です。
 そして、SCUBAは、
 Self-Contained Underwater Breathing Apparatusの略です。

個々の方式

メリット

留意すること

軟式であるということ

海や湖の水中の自然を身体で感じることができる。

身体には、圧力がかかり直接的にも間接的にも圧力の影響を受け、海象や水温や外敵の影響も直接受ける。

自給式であるということ

船上あるいは陸上から命綱がないので、水中を自由に動ける。

高圧空気を取り扱う。呼吸気体の量に限りがある。

開放式であるということ

呼気は水中に吐き出す。
呼吸装置の構造が簡単である。

 

応需式であるということ

人が吸ったときに、初めて空気を供給する。
この応需弁によって今のスクーバが完成した。

特性を知り、呼吸法をしっかり身に付けなければならない。

空気式であるということ

入手しやすい。

 

 スクーバは、だれもが扱える軽便な潜水器といえますが、前表の赤文字で書かれたところを、知識としてスキルとして、しっかり習得しなければなりません.。

 装置や器具を使った潜水の方法は種々あります。潜水艦や潜水艇で潜るのも潜水、ダイビングの代名詞のようなヘルメット潜水器そしてスクーバで潜るものも潜水です。いろいろな方法がありますが、参考までに次に掲げておきます。

 

【いろいろな潜水方式】

[硬式と軟式]
 潜水艦や潜水艇は、どんなに深く潜っても、その中にいる人は大気圧のままの圧力環境にいることができます。ですから、潜水艦や潜水艇は、それ自体が水圧によって押しつぶされないように頑丈に作られます。このような潜水を硬式潜水といい、潜る人は大気圧の環境にずっといますので、大気圧潜水ともいっています。

 それとは反対に、潜る人がもろに圧力を受ける潜水を軟式潜水といいます。ヘルメット潜水やスクーバ潜水がこれにあたり、潜水というと一般的にはこの軟式潜水のことをさします。潜る人は、いつも自分のいる周りの圧力を受けていますから、環境圧潜水ともいいます。

[送気式と自給気式]
 潜水者(ダイバー)が空気(呼吸する気体は空気ばかりでないが)を、船あるいは潜水球(水中エレベーター)(注1)や陸上から、送気管によって受ける方法を送気式潜水です。コンプレッサー(空気圧縮機)、送気管、潜水器で構成され、ダイバーは送器管によって船や陸上とつながっています。船や陸でコンプレッサーを運転したり、ダイバーを見張ったりしてダイバーの支援をする人をテンダーといい、その潜水の管理もします。送気式潜水では、テンダーとダイバーのシステムで潜水がなされます。

 ダイバーが使う空気をダイバー自身で持ち、船上あるいは陸上から送気を受けずに潜水する方法です。自ら供給するという意味で、自給式潜水といいます。空気を詰める圧力容器と呼吸器で構成されます。いわゆるスクーバがこれにあたります。一般的には送気式潜水のように、テンダー−ダイバーシステムがとれないので、すべての潜水管理はダイバー自身が行なわなければなりません(注2)

[開放式と閉鎖式]
 呼気のすべて外に捨て去る潜水器を、開放式潜水器といいます。
 呼気には、まだまだ酸素が残っています。呼気中の二酸化炭素をキャニスターといわれる二酸化炭素除去装置によって取り除き、酸素を再び送る潜水器があります。呼気を外に捨てずに循環させるので閉鎖式潜水器といいます。開放式と閉鎖式を合わせた半閉鎖式潜水器というものもありますが、閉鎖式と半閉鎖式潜水器は、酸素を使い非常に特殊な潜水に使われるだけで一般的なものではありません。

[定量式と応需式]
 定量式潜水は、ヘルメト潜水器のように、空気が途切れることなく連続的に送られてくる方式です。これとは違い、ダイバーが呼吸動作をしたときに、はじめて空気が送られるのを応需式といいます。

[空気式と人工呼吸気体式]
 ダイバーが呼吸する気体を、空気としたものを空気式、酸素や窒素やその他の気体を人工的に配合したものを人工呼吸気体式と分けることができます。最近、酸素の配分を人工的に増やしたスクーバも利用されはじめています。酸素と窒素の混合比率を代えたものを、ナイトロックスといいます。

(注1)

潜水作業深度に到達して、水中エレベーターや潜水艇から水中に出ることをロックアウトといいます。深海潜水で行なわれる方法です。

(注2)

ボートダイビング特にドリフトダイビング(ダイバーは潮に流されながら潜水する)の場合は、船に残る者(船長など)がテンダーの役目をするようになる。テンダーがダイバーの泡を見失うとダイバーが行方不明になることがある。

 

【ざつがく事典

 スクーバ(アクアラング)は、1953年(昭和28年)日本に輸入され水産界がいち早く導入しました。
 いろいろな意味においてスクーバダイビングは、まだまだ新しい行為といえます。