レギュレーター

【レギュレーターの概要】
 人は、タンクに入っている200気圧もの高い圧力の空気を、直接吸うことはできません。

 そこで呼吸装置が必要となります。それも、水深10mにいるなら2気圧、水深30mにいるなら4気圧の空気というように、人がいる周りの圧力(環境圧)と、同じ圧力の空気を供給するものでなければなりません。

この装置をレギュレーター、日本語では自動空気調整器といっています。

 一口にスクーバといっても、取り扱う箇所にそれぞれ名前があります。これまで馴染みのない英語の名前ばかりですが、ダイビングの日常でよく使われるところを抜粋しました(下表)。これだけは早目に覚えておくと、実技実習のときにまごつかないと思います。
       

呼称

外見上の役目

よく使う部位の呼称

役目

ファースト
ステージ

タンクバルブに
接続

ヨーク

バルブヘッドを入れる。

ヨークハンドル

バルブにヨークを締め付ける。

キャップ

高圧フィルターを保護。

高圧ポート

残圧計(高圧ホース)を取り付ける。

中圧ポート

セカンドステージやBCなどの中圧ホースを取り付ける。

スィーベル

バランス型ファーストステージの可動式中圧ポート部。

セカンド
ステージ
口にくわえる フェース 正面。フェースをはずすとセカンドステージの内部を見ることができる。
パージボタン フェースの中央にあるボタン。押しと空気が出てくる。
マウスピース 口にくわえる。
エキゾーストパイプ ここから排気が出る
流量調整ノブ あるものと、ないものがある。
 

【機材を組み立てる】

 BC、レギュレーターの順でセットします。
    

(1)最初にBCのセット

1.

タンクバルブの空気の出る側にセットします。

2.

背負ったときバルブが後頭部に当たらない位置にベルトの高さを決めます。機種によって違います。

3.

これも機種によって違いますが、ベルトをタンクに締め付ける方式が違いますが、しっかり締め付けます。

2)次にレギュレーターのセット

1.

セカンドステージをくわえたとき、マウスピースと排水弁の位置関係は、マウスピースが上で排水弁が下になります。これが反対だと水が入って呼吸できません。マウスピースと排水弁の位置関係をこのようにすると、自分が呼吸するセカンドステージは、タンクを背負った姿勢で右側にきます。セカンドステージを右側にすれば、自動的にマウスピースと排気弁の位置関係になります(注1)

2.

ヨークハンドルをゆるめ、キャップを外します。

3.

次にバルブヘッドをヨークに通し、ファーストステージの空気取入孔とOリング溝をあわせて、ヨークハンドルを締めます。馬鹿力的にヨークハンドルを締める必要はありません。ヨークハンドルが止まって、最後に気持ち締めるといった感じです。ファーストステージが動いていても、バルブを開くと圧がかかり固定されます。

(3)組み立てたら、BCとレギュレータをつないで作動テスト

1. タンクの空気を直接BCに送るため、中圧ポートからきているBC用中圧ホースを、BCのインフレーター部に接続します。
2. タンクバルブを開けて、各部の作動テストを行います。

(注1)

写真ではスィーベル部が上にきていますが、これだと狭い溝などに入ったとき、ファーストステージが出っ張っていると岩などにあたり損傷することも考えられますから、スィーベル部は下になるようにしたほうがベターです。この場合、中圧ホース類の最初の設定からやり直す必要があります。スィーベル部が上であっても下であっても減圧機構の働きは変わりません。


【機材をそれぞれに戻す】

 使用後、機材はそれぞれに戻します。組み立てとほぼ反対の手順です。

  1.  バルブを締め、空気を止めます。このときレギュレーター内部に圧が掛かった空気が残っているので、ヨークハンドルはまわりません。

  2.  残っている空気をパージボタンを押して出します。

  3.  BCの中圧ホースをインフレーター部から外します。

  4.  ヨークハンドルをゆるめ、ヨークをバルブヘッドから抜き取ります。

  5.  キャップに海水が残っているので、バルブを少し開いて空気を出して吹き飛ばします。

  6.  海水がなくなったことを確かめ、キャップをフィルター部に被せてヨークハンドルを締め固定します。

  7.  BCのタンクベルトを緩め、タンクからBCを外します。

  8.  潜水中、BCの排気をするとエアーセル内に水が入るので、排気弁から水を抜きます。 

 

【重要なレギュレーターのスキルは】    

1.

 スノーケルの呼吸でもお話ししましたが、レギュレーターで呼吸を開始するときも、「呼吸」、この言葉通りの順序ではじめます。レギュレーターをくわえたら、まず吐いてから吸います。そうすることによって気室に入った水を排水できます。レギュレータークリアーといいます。
 レギュレーターは水の中でも、くわえたり外したりします(オクトパスをもらうときなど)。この順序を違えると、水を吸い込むことになります。
 息を吐かなくても、セカンドステージの真ん中のボタン、パージボタンを押すことによってもレギュレータークリアーはできます。どちらにしろ、気室に入っている水を追い出してから呼吸を開始します。
 

2.

 潜水中の口からレギュレーターが外れてしまったら、レギュレーターのありかに手を伸ばしレギュレーターを取り出します。スクーバ実習で、まず最初に習うことでレギュレーターリカバリーといいます。
 右手をお尻から、前にならえの腕のように後ろにならえをします。すると二の腕にレギュレーターホースが引っかかってきますから、そのまま腕を前にまわせばレギュレーターを確保できます。
 この方法でレギュレーターが来ないときは、左手でタンクを底から持ち上げ、右手を肩越しにバルブにまわし、中圧ホースの根っこから引き出すようにします。
 見えなくても、手探りでもレギュレーターを確保できなければなりません。たいへん重要なスキルですから、インストラクターのもと、しっかりマスターすることが大切です。

 

【手入れと管理】

 使用後タンクからファーストステージを外したら、キャップにタンクの空気を直接あて海水を吹き飛ばしますが、このとき、よくフィルター周辺にも空気を当てる人をみかけますが、フィルターには海水がついていませんから、これをする必要はありません。返ってフィルターにまわりの海水を吹き付けることになります。 

 セカンドステージの空気流出機構は、オリフィス(注2)といわれる鋭い刃の流出口が、シートというゴム板に当たって空気を止めています。デマンドレバーが作動すると、オリフィスとシートが離れて空気がでる仕組みになっています。このセカンドステージ可動部は、細かい部品が使われています。

 海水が乾くとシオが固形物として可動部機構に付着すると、フリーフローを起こし故障の原因になります。使用後はしっかり真水洗いして海水分を落としてください。そのときパージボタンを押すと中圧ホース内に水が浸入すりので、パージボタンはペコペコ押さないようにします。

 レギュレーターは頻繁に使用していれば、シオが固まったりすることは少なくなります。水洗いをしっかりしないで乾くと、シオや緑青(ブラス製のもの)が現れます。長期間保管するときは、念には念をいれて洗い、よく乾燥させてからビニール袋などに入れてください。ピストン部、オリフィス部などは乾きにくいところなので、念を入れて乾燥させてください。

 長期間保管したレギュレーターは、手入れがいい悪いにかかわらず作動を確かめてから使用するようにします。

 ほとんどのメーカーでは、1年毎のオーバーホールを奨励し、期限内は基本部品を無償で供給しています。

(注2)

ファーストステージにも使われていますが、単にオリフィスをいうとセカンドステージのものを指します。

 

【レギュレーターの種類】

 ファーストステージ、セカンドステージとも作動方式による種類があります。レギュレーターはダイバーの命といわれます。少々ややこしいことが書いてありますが、我慢して読んでください。

[ファーストステージの種類]  

減圧方式からの分類

減圧機構からの分類

外観上の特長

名称

特長

名称

高圧弁(*)

特長

バランス型

中圧室を設けることによって、中圧は一定に保たれるので、タンクの空気が少なくなっても、安定した呼吸感が得られる。

ピストン
タイプ

ダウンストリューム
タイプ

ファーストステージ内部に水が侵入する。ピストンOリングは定期的な交換を要する。 減圧部とヨークが直角に位置にある。スィーベルタイプのものが多く、中圧ホースは自在の方向に向けられる。(アンバランス型に比べ高価である。)

ダイヤフラム
タイプ

アップストリューム
タイプ

ファーストステージ内部に水が侵入しないので、寒冷地に適してる。ダイヤフラムと高圧弁を押し上げるポペットピンは定期的な点検を要する。 ヨークの取りつけ位置に違いはあるが、減圧部とヨークが直角に位置にある。スィーベルタイプのものは稀である。(アンバランス型に比べ高価である。)

[高圧弁] (*)
 
ダウンストリュームタイプ……下向弁といって、空気の流れる方向に沿って開く弁です。 
 アップストリュームタイプ……上向弁といって、空気の流れる方向に逆らって開く弁です。

[セカンドステージの種類]
 セカンドステージのデマンド弁もダウンストリュームタイプとアップストリュームタイプ(別名チルトタイプ)があります。アップストリュームタイプは、今では作られていません。

 ダウンストリューム弁の特徴は、空気の流れる方向に沿って開く弁なので、何かの原因で中圧が高くなったら空気が出っぱなしになります。空気さえ出れば、後は何とかなります。これをフェールセーフ機構といいます。

 しかし、ダウンストリュームの弁は、空気がかってに出てしまうことがあります。タンクにレギュレーターをセットしてタンクバルブを開けると、シューっと空気が漏れていることがあります。これをフリーフローといいますが、原因の多くは、弁シートとオリフィスという空気の出口の当りが悪くなっていたり、使用後よく洗わないなどの手入れ不足によるシオの付着だったりです。これは、更に大きいフリーフローを起こす兆候ですから、調整や点検やオーバーホールが必要です。対処できないほどの潜水中の激しいフリーフローは、熟練したダイバーでも最も恐れることですからレギュレーターの手入れと管理は怠らないことです。

 よくあることですが、セカンドステージが故障していなくても、勢いよくフリーフローを起こすことがあります。これもダウンストリューム弁の特徴で、吸気側の流速が速くなると、吸気側の圧力が下がるという気体(流体)の性質、によるものです。これをベンチュリー効果といいます。吸気側が陰圧になるので、ダイヤフラムが勝手に押されてフリーフローをおこします。

 タンクにレギュレーターをセットしてタンクバルブを開け、レギュレーターのテストをするためにパージボタンを強く押しているとベンチュリー効果によるフリーフローを誘発します。そのときは、マウスピースから息を吹き込むと止まります。
 また、この現象は水面でも起こります。マウスピースが上を向いていると、ダイヤフラムが水圧で押され、勢いよくフリーフローが起こります。このときは、マウスピースを下にして水に入れると止まります。
 ボートなどから飛び込んだ瞬間に、パージボタンが押され激しくフリーフローを起こすことがありますから、注意することと対処をしっかり覚えておいてください。

 レギュレーターの眼目は、何といっても水中での呼吸が、いかに楽か快適か、というところにあります。

 レギュレーターは環境圧に応じた圧力の空気を送ります。ですから、呼吸する空気の密度は必然的に上がります。狭いドアーから多くの人が出ようとしても、いっぺんには出られないように人の流れに抵抗が生じます。それと同じように、レギュレーターから出る空気にも抵抗が生じ、呼吸がしづらくなります。これを呼吸抵抗といいます。深く潜るほど呼吸抵抗が増してきます。
 また、空気の流量によっても空気の流れ方(層流とか乱流)が変わり、呼吸抵抗に変化を生じます。

 この呼吸抵抗を解消するために、ベンチュリー効果を利用するなど、セカンドステージはいろいろな工夫がなされています。代表的な例をあげておきます。
       

呼称

特長

エアーチャンバ式

エアーチャンバを設け、中圧を利用することによってスプリングのバネ圧を弱め、圧力差によるデマンド弁の反応をよくしたタイプ。

バイパスチューブ機構

オリフィスから出た空気を気室に送る以外に、直接マウスピースに送るバイパスを取りつけたタイプ。

流量調節機能

流量調節ノブの付いているタイプ


【高圧ホースと中圧ホース】

 ファーストステージには、高圧と中圧の取りだし孔(ポート)があります。高圧ポートは残圧計(潜水中、タンク内圧力を常に表示する計器)を連結します。中圧ポートはセカンドステージを連結します。といっても直接つけるわけでなく、ホースによって繋ぎます。このホースは、高圧用、中圧用とあって強度が違います最近は、高圧ポートと中圧ポートのネジ径が違うので、間違うことはありませんが注意を要するところです。

 

【さて、どれを選ぶか】

 ファーストステージの減圧機構やセカンドステージの流量調整機能や材質を組み合われれば、何種類ものレギュレーターができます。迷ってしまうのも当然です。

 安全装具としての…BCD(浮力調整装置)に空気を送ったり、

 一緒に潜っている人(バディ)が空気(エア)を吸いきってしまったときなど…仲間を支援するために、もうひとつセカンドステージ(オクトパスレギュレーター、単にオクトパスという)を付けておいたり、

 寒く冷たい海で使う…ドライスーツにエアを送ったり、

するために、ファーストステージに中圧を引き出せるポート(孔)が、3つ4つあるのを選ぶ方が後々融通がききます(たいていのものは、そうなっている)。ファーストステージは、タンクの圧力を減圧するばかりでなく、BCDやオクトパスやドライスーツに中圧を配るデストリビューターの役目をしています。

 この一連のスクーバダイビングのシステムは、決して安いものではありませんから、よく研究し、先輩やショップの人、インストラクターによく聞いて購入するとよいでしょう。