【湖沼の型】
湖沼は、水深・水の色や水の濁り・水質などによって、そこに棲む生物の種類も違ってきます。深くて生物が棲めない湖を貧栄養型、浅い湖を富栄養型と呼びますが、湖の型の分類は次の通りです。
[貧栄養型]
貧栄養型の湖は水に溶けている栄養塩類が少なく、生物の棲息はないか、またあったとしても僅かな湖をいいます。水は藍色または濃緑色でよく澄んでいて透明度板は10〜30m見える湖が多くあります。有機物が少ないので水中の酸素の消費は少なく、水底までほとんど飽和しています。
湖底は岩石・砂・砂礫などで成り大型の植物の生育は悪いが、泥部分の湖底にはユスリカの幼虫が見られ、甲殻類が比較的多く、マスやウグイの寒冷水魚が棲息します。
日本の湖を湖沼の型で分類すると、摩周湖、阿寒湖、田沢湖、十和田湖、中禅寺湖、琵琶湖、池田湖などがこれに入ります。
[富栄養型]
多くのプランクトンが繁殖しているので、湖水は緑色または黄緑色をして透明度は低くなります。夏は有機物が分解されるので、水の酸素は消費されるため、湖底ではたいてい無酸素の状態になってしまいます。オオユスリカの幼虫やイトミミズのような酸素を必要としない生物が見られます。
富栄養型の湖は、植物プランクトンでは珪藻や藍藻、動物プランクトンとしてはワムシ類やべん毛虫類がよく繁殖します。魚類は、暖水魚のウナギ、コイ、フナ、ワカサギなどが多く、漁獲として有用な湖です。
霞ヶ浦、諏訪湖、震生湖などが富栄養型の湖に分類されます。
[酸栄養湖]
酸栄養湖は火山地方にあって、硫酸や塩酸など無機酸が多く溶け込んでいる酸性の強い湖です。湖水の色は特徴的で、青く透き通っているものもあれば、牛乳を流したように青白くトロミを感じさせるものもあれば、鉄イオンが溶けて赤褐色をしている湖もあります。
著名な湖としては、磐梯高原の五色沼、猪苗代湖、屈斜路湖です。
[腐植栄養型]
泥炭地方にあって、水中に腐植コロイド(注4)が浮いているので水は褐色になります。プランクトンは一般的に少なく、魚もほとんど見られません。これは、湖水が強酸性なことと、腐植質が水に溶けている硝酸塩や燐酸塩を吸着してしまうという理由によるものといわれています。
日本では北海道の泥炭地帯に見られ、東北地方の岩木川の流域がこの湖の南限といわれます。
(参考文献:日本の湖ー湖沼学入門 鈴木静夫書 内田老鶴圃新社)
(注4) |
物質が0.1〜0.001マイクロメートル程度の微粒となって液体・固体・気体の中に分散している状態をいいます。膠(にかわ)・デンプン・寒天・卵白・マヨネーズ・煙などの類がこれにあたります。 |
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