マスク

 水の中で目を開けても物をはっきりみることができません。理由は、角膜の屈折率が水の屈折率と同じくらいなので、光は角膜でほとんど屈折しないで遠視の状態(網膜の後ろで像を結ぶ)になってしまうからです。空気中で生きる人間が、水中でものを見るにはどうしても目の前に空気の層が必要なのです。そのためにマスク(水中めがね)を使用します。

 スノーケリングやダイビングでは水泳で使う目だけを覆うゴーグルでなく、鼻まで入る形のものを使います。スノーケルの項で述べましたが、鼻が入ることによってマスク内の空間は呼吸死腔になり、だったら、ゴーグルの方がいいじゃないかと思う向きもいるかと思いますが、スキンダイビングやスクーバダイビングでは、鼻まで入ることによって解決されることがあるのです。これについては後にゆずります。

 マスクは、フレーム、ガラスあるいはレンズ、スカート、バンド、バックルの五つの部品で構成されます。マスクも材質や形状でさまざまなものがありますが、マスクの形状は視野に影響します。マスクの形状を一番左右するのは前面ガラスの数で、2枚のものと1枚のものがあります。二眼式あるいは一眼式ともいいます。

 マスクを着けたときの視野は、空気中の裸眼視野より著しく減少しますが、水中のものを見るということからすれば、両目で見る重複視野率で比べた方が妥当性があります。したがって重複視野率は、二眼式で約45%、一眼式で約80%で、一眼式の方が勝っています。 

 さて、ふだん眼鏡を使用している人も心配ありません。近視用、遠視用、遠近両用などのレンズが既製品、オーダーメード品で揃っています。左右の視力も違う人も多いのですが片方づつ選ぶことのできるので、眼の悪い人にとって二眼式のマスクはたいへん便利です。レンズは普段使用している眼鏡のレンズの度数票を参考にして選ぶかオーダーします。

  視野を最も決定づけるのは、眼球とガラス面までの距離で、これが近ければ近いほど視野は広くなります。ガラス面がより眼に近づいても安全なように、マスクの材質も改良を重ねられ、今では優秀な製品を手にとることができるようになりました。またガラス面がより眼に近づくことによって、マスクの内容積も小さくなり呼吸死腔も減りました。

 最後に選び方ですが、水漏れがあってはマスクは役に立たないので、顔にマスクを当て鼻から軽く息を吸ってみて落ちないもの、スカート部のフィット感を第一とし、視野、内容積、形状、材質、好みの色合いなどをいれて決めるのがよいでしょう。