一酸化炭素中毒

【一酸化炭素中毒】

 一酸化炭素は、無色・無味・無臭の気体で、赤血球中のヘモグロビンとの結合力は、酸素より約300倍も強いので、酸素の運搬を妨げます。その結果、組織細胞が酸素欠乏となり中毒症状を現わします。これが一酸化炭素中毒です。呼吸する空気に一酸化炭素が0.07%あれば、血液中のヘモグロビンの50%が一酸化炭素と結合し、酸素の供給は半分にする怖い気体です。一般的には都市ガスに利用しますが、有機物や炭素が不完全燃焼する際に発生します。

 一酸化炭素がタンクに混ざっていたら、ダイバーはひとたまりもありません。コンプレッサー(タンクに空気を詰める圧縮機)のピストンが不調で高温になり、ピストンオイル(潤滑油)が燃えだしてしまうことが、タンクに一酸化炭素が混入する一番の原因です。ダイバー自身がコンプレッサーを操作することはめったにありませんから、タンクに空気を詰める側つまり高圧空気製造者の責任となります。私たちダイバーは、正規で管理のゆきとどいた高圧空気製造者から空気を求めることが大切です。

 一酸化炭素は、大気圧下で強い中毒をおこしますから、水中(高圧下)では分圧が高いので、さらに強く中毒を発症させるダイバーにとって非常に危険なガス(気体)です。

[急性の症状]
 頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、吐き気、嘔吐などがおこり、さらに進むと意識混濁、けいれん、昏睡に陥り死に至ります。ダイビング中に、一酸化炭素中毒に限りませんが、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、吐き気などの初期的な症状を感じたら、すぐにダイビングを止めることが肝心です。
 一酸化炭素中毒の外見的な症状は、唇、爪、鼻孔などが赤く変色し、皮膚も鮮やかな赤色になります。

[応急処置]
 一酸化炭素とヘモグロビンとの結合は可逆的なので、一酸化炭素を含まない空気中では、血液中の一酸化炭素は呼気によって排出されヘモグロビンは酸素と結合していくので、新鮮な空気中に運搬します。重篤の場合は人工呼吸も必要になります。


【オイル蒸気による肺炎】

 これも一酸化炭素と同じで、コンプレッサーの不調によりピストンオイルが蒸気となってタンクに混入することです。これを吸うと、肺の内にオイル蒸気がまんえんし肺炎の症状を呈します。リポイド肺炎といわれます。

【異臭に気を付けましょう】

 ダイビングは、タンクの空気を点検することから始まります。大気中でレギュレターを吸って異臭などないか味見します。一酸化炭素は無味無臭なので分かりませんが、オイル蒸気が混入していると油臭かったりゴム臭かったりします。これらの臭いがすれば、オイル蒸気だけでなく一酸化炭素も混入していると疑うこともできます。タンクの空気が気になるようだったら、遠慮しないで他のタンクと交換してもらいましょう。