ボートダイビング

 ボート(船)を利用したダイビングほど快適なものはありません。重い機材を背負ってエントリー地点まで歩くこともなく、延々と水面移動することなく目指すポイントに行けます。

 このようにボートはダイビングポイント往復の交通手段が主な役目ですが、ドリフトダイビング(注)のように積極的にダイバーを支援したり、ダイバーが不調を起こしたときにすぐに救助したり、ダイバーが休んだりする生活面をサポートします。つまりボートダイビングとは、どんなボートでもボートを利用したダイビングのことをいいます。

 ボートは、遥か彼方の隠れ根やアウトリーフや大洋ど真中の環礁へとダイバーを運びます。時には潮の香り豊かな風と共に、あるときは沛然たるスコールの中を、海そのものを実感しながらのダイビングです。ダイバーを海中の放浪者とすれば、ボートダイビングこそ縦横無尽に、さまざまなバリエーションのダイビングを楽しむことができます。

 しかし、ボートダイビングは、遥か沖でのダイビングになります。自力で泳ぎ帰れない海、ということをしっかり認識して臨まなければなりません。

 ボートダイビングの多くは地元のボートサービスを利用します。日本では、自分で操船してダイビングするという方法は日常的ではありません。

 船上には、船長あるいはボートを操船できる人が残っていることが、本来のボートダイビングの姿です。スクーバダイビングの項で説明しましたが、スクーバダイビングは送気式潜水のように送気管でダイバーはつながれていませんが、ボートダイビングでは、船長にに限らず船上に残る人がテンダーの役割をします。

 テンダーの重要な仕事はダイバーをウオッチ(見張る)ということですが、水中にいるダイバーを直接見張ることはできません。そこで海面を見詰め、ダイバーの泡を監視したり追ったり、海面に浮上したダイバーをボートに収容することにあります。スクーバダイビングでは、ここにおいてダイバー−テンダーシステムが構成されます。

(注)

潮の流れにに乗ってダイビングすることです。船頭の技量が重要です。

 

[ボートをアンカリングする場合]
 ダイビングポイントにもよりますが、海が穏やかでダイバーがボートに楽に帰って来られそうな海は、通常アンカリングします。

 また、逆に潮が強くダイバーを決まったところに降ろさなければならないときにもアンカリングします。この場合、アンカーロープを潜降ロープ(浮上の際にも使う)として兼用するときがありますが、波があったり、急傾斜の海底だったりすると突然アンカーが外れ、ダイバーを跳ね飛ばすこともありますからアンカーが掛かっている周辺は注意を要するところです。

 潜降ロープが別に用意されていれば、それを伝わって潜ります。

 アンカリングしても、ダイバーを降ろしたあと不測の事態にそなえ、船長はすぐにアンカーを引上げ待機することもあります。

 ダイビングは、場面場面で対応が違ってきます。正しい臨機応変さ、が求められます。

 潮の流れがある場合は、潮の上に向って潜っていくことが肝心です。潮の下に向うと帰りがつらく、途中でエアー切れになるおそれがあります。

[ボートをアンカリングしない場合] 
 
潮の流れが速い海域や、また積極的の潮の流れに任せて潜るドリフトダイビングでは、ダイバーの収容はテンダー(船長および船に残っている人)に全てがかかります。といっても天候や海面の状況によって見失うこともありますので、全て彼らに任せないで、ダイバーとしてはシグナルフロートなどの携行は忘れてはなりません。

 いずれにしても、海は一様でなくダイビングスポットはそれぞれのルール(やり方)があります。船長やガイドから、海域の特性やスポットについてブリーフィングがありまから、よく聞いて理解して逸脱した行動は慎むようにします。

 

【ボートで】

 ボートは地域によっていろいろな形式のものが使われています。漁船もあればクルーザータイプもあり、外国ではバンカーボートもあります。ボートは、それぞれの地域の生活に密着してる型の船がダイビングに転用されています。そしてダイビングに供しやすいように、タンクの置き台やベンチを設置している船も見かけるよになりました。日本では、漁船や和船型遊漁船が多く使われています。沖縄方面ではクルーザータイプのものが運行しています。

 どんな船でもダイビングポイントに着くまで快適に過ごせるように努めます。
 ダイビングの準備をスムースに行なえるように、自分の用具機材をまとめておくことです。ダイビングの用具機材は、形の大きいものから小さいものまであり、ほかの人のと色も形も同じようなものばかりで狭い船の上ではきちんと始末していないと、いざダイビングというときに余分な労力をつかったり、重い機材を背負ったまま仲間を待たせたりすることになります。特にダイビング後は、用具機材をあちこちに散らばりやすいので自分の機材は素早く始末して、次のダイビングに備えゆっくり休息することが大切です。

 船酔いする人や船酔いになってしまった人は、揺れの少ない場所を譲ってもらい快適に過ごしましょう。船酔いの人はポイントに着いたら、ボートのはしごなどにつかまって海に入ったり、スノーケリングしたりして様子をみてください。意外にケロリと消えるものです。ダイビングをするかしないかの判断は、それからでもいいでしょう。

 
【エントリー】

 スノーケリング「エントリー・エキジット」と重複するところもありますが、おさらいも含めて学習しましょう。

 いよいよ、海へエントリーします。ビーチと違って飛びこむことになります。むろん、飛びこむのに充分な深さがあって、飛びこむ海面に人や浮遊物がないことを確認してからです。

 スノーケリングやスキンダイビングだったらスノーケルをくわえ、飛びこんだのち海面へ浮いたらスノーケルクリアーをして呼吸を確保します。間をおかずに息を吸うと水を吸いこんでしまうことがあります。スクーバダイビングだったらレギュレターをくわえて飛びこみます。レギュレーターはいつでも呼吸は確保できていますから心配はいりません。

 飛びこんだ瞬間、マスクが勢いで外れることがありますから、片手でマスクのガラスを覆うようにして押さえつけていることが肝心です。それでも心配だったらもう一方の手は後頭部のマスクバンドを押さえつけているようにします。また、オクトパスレギュレーターがフリフローをおこすこともあるので、このへんも注意してください。

 一般的な飛びこみ方をふたつ紹介しておきます。
前立ち飛びこみ
(ジャイアントストライドエントリー)
後ろ飛びこみ
(バックロールエントリー)

海面までの高さがあるときに行ないます。ジャイアントストライドのい名のとおり、大股で歩くように大きく足を出します。飛びあがるような動作は止め、落下にまかせます。差し出した片足のフィンの先は、空に向くようにします。

海面まで低いときに行ないます。船べりに腰掛け、少し前かがみになって勢いをつけずに後ろに倒れます。

 ビーチでもボートでも、エントリー時の原則は、BCに空気を入れて浮力の確保をしておくことです。エントリー後、海面でもう一度ダイビング機材が正しく装着されているかなどを確かめ、潜降ロープに向い合図を確認して潜りはじめます。

 何度も申し上げていますが、海はいつも一様ではありません。そのときどきでテクニックも変わります(注)から、インストラクターやガイドによく教わって身に付けていきましょう。

【エキジット】

 アンカーロープや潜降ロープを伝わって浮上すれば確実にボートのもとに行くことができます。水深5mでの安全停止もありますから、ロープによる浮上が最も確実といえます。

 クレーザータイプのダイビングボートには、エントローやエキジット時のダイバーの負担を少なくするために、水面レベルのプラットホームが設備されているものがありますが、漁船や和船はハシゴが降りるだけです。ハシゴの下段は水中に没していますが、やはり垂直に近い状態ですから、ずっしりと重量がよみがえる機材を背負って上がるのは一苦労です。

 テンダーやすでにボートに上がった人が手伝います。まずウエートベルトをとって渡しましょう。次にフィンを脱いで渡します。フィンを脱ぐときは、片手はしっかりとカレントロープやハシゴをつかんでいて下さい。潮に流されるとフィンのないキックは何とも頼りなく、場合よっては誰かが飛びこまなければならないことになります。そしてタンクを背負ったまま上がれる人は上がります。
 特別な順序はありませんが、とても無理だと思う人は先にタンクも外し受けとってもらい、なるべく軽い状態で上がれば簡単ですし、滑ってっ怪我をすることもありません。

 また、我先にと上がろうとするのが人情ですが、いっぺんにハシゴに集まらないで、充分間をとって整然と上がるのが結果的に早いものです。

 

【ダイブクルージング】

 日本ではあまり開催されていませんが、外国ではボートに寝泊まりしながらダイビングするダイブクルーズが行なわれています。船長以下ボートのスタッフが食事の世話からガイドまでしてくれます。青い海を疾走し、カラフルなサンゴ礁に潜り、サンゴ礁の入江での一夜そして満点の星などなど海いっぱいの世界、それこそダイビング三昧の毎日で、ダイバー冥利に尽きる活動です。

 ダイブクルージングへの参加も、しっかりしたダイビングの基礎の上に成り立ちます。インストラクターのもと知識とスキルを繰り返し習熟してください。