圧力

【大気圧】
スキンダイビング・スクーバダイビングをやる以上、圧力に関してのことは十分理解しておいてください。

 地球をとり囲む大気は、高度約3万2千メートル(注)におよんでいます。私たちは、普段これほどの厚みのある空気の重さは感じていません。それは大気圧下の生物としての条件のもとに生まれたからです。

 水銀柱を使って大気の圧力の存在を示唆したトリチェリーは、「われわれは空気という大洋の底に沈んで生きているのだ」と、ダイバーに通じるロマンチックな表現をしました。

 この空気という大洋の底、つまり地表面にかかる空気の圧力を大気圧といい、海面を基準としたすなわち海抜0メートルの大気圧を、1気圧あるいは1atm(atmosphere absolute)といいます。

(表1:気圧の単位)
気圧
(atm)
水(kg/cm
(密度:1.0g/cm3
水銀柱(mmHg)
(密度:13.595g/cm3
ツール(torr)
ヘクトパスカル(hPa)
(水(kg/cm2)×重力(9.80655N/kg))
ミリバール(mb)
bar ポンド
(psi)
1.033 760 1013 1.013 14.7

(表2:潜水での単位の使われ方)
気圧(atm)・(bar)・(kg/cm 大気圧・水圧・環境圧・圧力計の表示。気体の体積との関係
水銀柱(mmHg) 呼吸気体や生体のガス圧表示
ヘクトパスカル(hPa)・ミリバール(mb) 気象
ポンド(psi) 欧米系圧力表示

(注):

大気圏は、地表から1000kmまでにもおよびます。地表から10〜16km位を対流圏、そこから上30km位を成層圏、地表より50km以上は中間層および熱圏といいます。ここでは理科年表の「標準大気の高さと気圧」の最高高度の値で示しました。

 

【水圧】

 文字どおり水の圧力です。海の深さ10メートルに対して1気圧、と海水圧で表されます。すなわち、海の水深10メートルの水圧は1気圧、水深20メートルなら2気圧、100メートルなら10気圧となります。また、圧力計や水深計は、大気圧を零として表示するので、この圧力をゲージ圧力(atmosphere gauge:ATG)ともいいます。

(表3:1気圧の深さ)
1気圧(atm) メートル フィート
海水 淡水 海水 淡水
10m 10.3m 33ft 34ft



【絶対圧力とゲージ圧力】

例えば、水深10メートルの圧力は、大気圧1気圧と水圧1気圧を加えた圧力になります。これを絶対圧力(単位:ATA)といい、ダイビングの諸現象は、ほとんどこの絶対圧力で考えます。先に書きましたが、圧力計や水深計そして減圧表(スクーバの項で説明)は、ゲージ圧力表示です。

 絶対圧力と水圧あるいはゲージ圧力は、次のような関係になります。

 水圧あるいはゲージ圧力(ATG)=水深(m)/10

 絶対圧力(ATA)=ゲージ圧力+大気圧(atm)=(水深(m)/10+1

 
【圧力の倍率】

 圧力は、10メートル潜るごとに1気圧づつ増していきます。ここでもうひとつ大切なことは、同じ10メートルの変化でも、深くなるにしたがって圧力の倍率は小さくなります。逆に浅くなるにしたがって、圧力の倍率は大きくなります。

(表4:水深と絶対圧力)
水深(m) 絶対圧力(ATA)
10
20
30
n (n/10)+1

(表5:圧力の倍率)
水深の移動 圧力の移動 水深の変化 圧力の倍率
0m→10m 1気圧→2気圧 10 2.0
10m→20m 2気圧→3気圧 10 1.5
20m→30m 3気圧→4気圧 10 1.3
40m→50m 4気圧→5気圧 10 1.2

 
 水深が深くなればなるほど、同じ10メートルの水の厚さに対して圧力の倍率は小さくなるので、気体の体積の変化も小さくなります。潜水生理(減圧症)やダイビング技術を考えるとき、この圧力と体積の倍率変化はとても重要な要素になります。

 

【ざつがく事

 世界人口は65億人位です。この大半の人々が海抜0〜100メートルのうすっぺらな地表に住んでいます。つまり1気圧下にいます。これらの人が高い山に登ったり、海に潜ったりすれば、当然圧力変化の影響を受けることになります。